北朝鮮の核武装について、もっと報道せよ!
- 2015/05/28
- 19:16
【北朝鮮の核武装はパーフェクトか?!】
日本では、ここ数年、北朝鮮の経済力や政情の不安定さから「北朝鮮のミサイル発射は恫喝にすぎない」とか、「核実験はどうせダイナマイトを爆発させた偽装だろう」、「実戦配備はできない」などといった楽観論が散見された。国会議員や著名なジャーナリストにも、そういう発言が見られた。
しかし大方の希望的観測は外れ、北朝鮮は人工衛星の打ち上げに成功。弾道ミサイルも見事に開発した。しかもアメリカを怖がらせるに充分な開発を完了した。さらにここにきて、核兵器開発に関する楽観論が論破されそうな情報が揃ってきたようだ。
その一つに、「北朝鮮はアメリカの本土まで届く、核弾道ミサイルを実戦配備した」という米軍からの情報がある。
2015年4月7日、国防総省において北朝鮮の弾道ミサイル開発に関する衝撃的な発表が行われた。ブリーフィングをおこなったのはNORAD(北米航空宇宙防衛コマンド)およびNORTHCOM(北方軍)司令官を兼任するウィリアム・E・ゴートニー海軍大将、だという。この話を詳しく書いた「軍事研究」はこう記述している。
「北朝鮮は、KN—08に核兵器を搭載し、米本土に発射する能力を持っている(the ability to put a nuclear weapon on a KN-08 and shoot it at the [U.S]homeland)というのが我々の評価である…現在それ(KN—08)は作戦状態にあると判断しており、それで我々はこれに対処すべく行動している」
この海軍大将のポジション、ブリーフィングの信ぴょう性は極めて高いとこの記事は、念を押している。日本や韓国については次の記述が目を引く。
「たとえば、彼らの弾道ミサイル運用法から考えるならば、八輪型の自走起立発射機に積まれたスカッド系(Second-B/C/ER)短距離弾道ミサイル(SRBM)は、韓国が主な攻撃対象となろう。ミサイルの保有数は500発〜600発と推測されている。また10輪型の自走起立発射機に積まれたノドンは、対日本用ということになる。準中距離弾道ミサイル(MRBM)に分類されるノドンの保有推測数は、200発〜300発との見方が有力のようだ」(「軍事研究」2015年6月号/軍事研究会)
現時点では、こういった情報はあまり共有されていない。
【北朝鮮を念頭に置けば、日本は核武装すべきか?】
北朝鮮の不安定さが浮き彫りになるなかで、北朝鮮の核問題をめぐる6者協議の日米韓首席代表会合が、今年の5月27日ソウルで開かれた。「会合後、韓国の黄氏は記者団に対して北朝鮮の内部情勢が不安定になり、核・ミサイル開発も進んで深刻さを増しているという認識で一致したと説明」(朝日、5月27日付け)したという。
この記事のように「深刻さを増している」という程度の表現にとどめられてはいる。過敏になりすぎることに対しての自制が働いているに違いない。だが一方で、「知る自由」に対して日本の報道は貢献しなければならない。
同時進行的に議論されている集団的自衛権も北朝鮮とは無縁ではない。
「日本を狙ったミサイル攻撃で、相手がミサイル発射に着手した後に敵の基地を攻撃する場合には、個別的自衛権の範囲として憲法上認められる」という政府見解に対しての反論も、あながち不当なものではないことは理解できる。
野党や平和論者からすれば、安倍政権の軍拡は極めて異常に映る。ロシアや中国、北朝鮮というよりも、安倍の右傾化が戦争を引き起こすという考えが根強い。
軍事力や警察力を高めることは確かに諸刃の剣である。その武力が国民や政治家に向けられることは常に念頭に置かねばならない。
武力とはそういう性質のものだからである。
だが、それは「軍事独裁者であるシリアのバッシャール・アサドや北朝鮮の金正恩を見てもよくわかる」という理解の方法が重要だ。
独裁者の意のままに国民や政治家を粛清する国家はいまなお存在する。そしてシリアと北朝鮮が手を結んできたことも象徴的である。この事実は、あらゆる思想よりも的確だ。
かつて中国が北朝鮮の武器取引を黙認していたとき、「中国が何もしなければ、韓国と日本は核兵器を保有する」と言ったのは、キッシンジャー元国務長官だった。北朝鮮の核開発阻止ついて、CNNのインタビューでそんな答え方をして日韓の政治家を驚かせたのは2009年のことだった。
日本の報道では、「中国が米国と協調して北朝鮮への圧力を強める必要性を説いたもの」と上手に説明されたが、これは、北朝鮮が核保有国になれば、日本や韓国が核兵器を持つべきだとも解される。そして北朝鮮の核開発は阻止できなかった、というのが現実なのだ。
すでに「韓国や日本は核兵器を持つべきか」という論議の兆候もある。
ちなみに「相互確証破壊」という核戦略の概念では、2国間で互いが核兵器を持ったとき、どちらかが先制核攻撃をしても、もう一方が報復すれば共倒れになるために、戦争が回避されることをいう。
いま、集団的自衛権で、「日本を狙ったミサイル攻撃で、相手がミサイル発射に着手した後に、敵の基地を攻撃する場合」に、それが「個別的自衛権の範囲」として、「憲法上認められるかどうか」などが議論されている。
日本なり韓国に核爆弾が落とされ、被害が拡大してから米軍が応戦することは考えやすい。しかし北朝鮮のミサイル発射の着手により、日本が先制攻撃できるだろうか。
かつての北朝鮮のミサイル発射で、裏の裏をかかれてしまったことを考えると、簡単ではなさそうだ。アメリカなどの遠距離は迎撃できたとしても、韓国や日本が無傷であるとは考えにくい。
【中国に見切りをつけ、北朝鮮はロシアに急接近】
「相互確証破壊」という概念は、核兵器保有国こそ有利であるということを前提にしたシンプルな考え方だ。
この考えに固執して、核開発とミサイル開発に専念してきたのが北朝鮮だった。すべてのことよりも軍事を優先する。それを北朝鮮は、「先軍政治」、「先軍思想」と称し、軍事資材の輸出で外貨を稼ぎ、そして技術を交換してきた。
北朝鮮は、国民を上から核心階層、動揺階層、敵対階層の3階層に分け、全体で51もの身分制度で徹底差別し、下層の人間が数百万人も餓死してもなお、軍事力増大に金を注ぐ国であることは、明確に意識すべきだ。農民は、まさに農奴であることも明らかになってきた。
世界各国の政治家や財界、タレント、運動家や報道陣を平壌に招き入れ、もてなし、帰国して悪口を言わせない戦術でパイプ(人脈)をつくらせる。閉鎖的な国家にパイプを持つ人は重宝される。こうして報道もまた歪められてきた。
しかし、それらのおめでたい人々は、屍の上で踊るピエロだった。
帰国事業で送られた在日朝鮮人と日本人妻たち、拉致された日本人たちと、会うことすらできない国家であることは忘れてはならない。
2013年12月に、北朝鮮のナンバー2の張成沢(チャン・ソンテク)が処刑され各国は色めき立った。今度こそ、金正恩体制が崩壊する兆しなのではないか、という観測もあった。張の息のかかった軍人や政治家は、家族もろとも粛清され、張が仕切っていた54局の利権は、金正恩の資金を扱う朝鮮労働党39号室に移された。
そしていま、中国が金正恩に見切りをつけ、金正恩はロシアに急接近している。かつてロシアは北朝鮮の債務110億米ドル(借款の9割)を免除し、残りの1割で合同事業を行うとして、ロシア天然ガス企業と北朝鮮の石油産業省は、覚書に調印していた。
ここにきて、ロシアと北朝鮮は「2020年までに貿易総額を10倍に増やすことで合意した」(タス通信)とか、「北朝鮮は石油の調達先をこれまでの中国からロシアに変更した可能性がある」などの報道が目立っている(韓国KBSワールドラジオ(中国語電子版)/フォーカスアジア、2015年4月24日)。
事態は楽観視できるものばかりではない。
朝鮮総連のマツタケ不正輸入事件に関する逮捕や家宅捜索で騒ぐのはいい。
だが、日本の報道、とりわけ新聞やテレビは、朝鮮総連の本国である北朝鮮の軍事動向について、もっと整理して解説すべきではないだろうか。
本文敬称略

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