劣等感(コンプレックス)は、乗り越えられるか?
- 2015/08/24
- 15:18

根の深い劣等感は、思いの外やっかいだ。
かつて学歴コンプレックスをテーマに数人で議論したことがある。「自分は中卒だから」、「3流大卒だから」という根の深い劣等感は、どうしたら克服できるのかと、話が弾んだ。
面白かったのは、低学歴劣等感よりも、実力も知識も足りないのに、たかだか慶應や早稲田レベルの大学を出たということだけで優越感を持っている使えないサラリーマンの例だった。こういう連中は学歴を武器にしたい気持ちが裏腹となり、低い学歴の部下に横柄になる一方で、東大や京大、ハーバードと聞くと大人しくなり、著しい劣等感を示すのだという話が印象的だった。あるいは医療界のヒエラルキーのなかで、3流大学卒の医師が、異常な学歴コンプレックスを持つ例もあがった。
学歴、身長、年収、外見、財産、知識、能力 ……。
どんな人にも、いくつかの劣等感(コンプレックス)があるものだ。
だが、劣等感の乗り越えに失敗すると、それは、くだらないほどその人に長年つきまとい、客観的な観測を失わせてネガティブな思考になり、卑屈な態度をさせ、勝てる相手にすら負けを宣言してしまい、ともすれば、心を弱らせ、精神を破壊してしまうらしい。
では、どうしたら、そういった劣等感は乗り越えられるのだろうか?
もしあなたが何らかの劣等感を持ち、それが自分を憂鬱にさせ、長い間、解決できないで悩んでいるとしたら、僕はまず「アドラー心理学」で著名な、オーストリア出身の心理学者、アルフレッド・アドラーを扱った自己啓発本のいくつかを紹介するだろう。
それらは非常に具体的、かつポジティブで、有益だ。あなたの劣等感を消し去り、むしろそれを強みにできるほど力づけてくれるかもしれない。アドラー自身、150センチと身長が低く、声帯に痙攣もあったという体験があったという。彼の『器官劣等性の研究』は、今なお一読する価値がある。
日本は、「見た目」劣等感の国
日本では、外見、すなわち、見た目に不満感や劣等感を持っている人が多いという。
2007年に、新潮社発行の『人は見た目が9割』(竹内一郎著)が、一気に100万部を超えるベストセラーになった。この本が売れた背景にも、日本人特有の、見た目の劣等感があったようだ。しかも、これは一過性の現象とも言えず、同じ著者から、その続編の『やっぱり見た目が9割』、『人は見た目が9割 「超」実践篇 』が出版されている。さらに、2014年には、別の著者から『21世紀は男も女も「見た目」が100%』なども出されている。
見た目へのこだわりは、むしろ深化しているかもしれない。
日本人が、自分の外見に不満を持っていることは、ドイツの週刊誌『フォークス/Focus』(2015年6月)が数字で裏付けている。
世界22カ国2万7千人の調査で、調査対象者の過半数が自分の外見に満足していたにも関わらず、自分の外見に最も不満なのは日本人で、「比較的満足」、「非常に満足」との回答はわずか26%だったという。次いで不満足な国は、韓国だったというから面白い。韓国での、学歴や容姿の偏重はすさまじいものがあるからだ。
見た目への不満は、ファンション、美容や美容整形、アンチエイジングの市場を潤わせ、経済効果を生んでいるのだから悪いわけではなかろう。女性がより美しくなり、男性がよりかっこよくなるのは有益である。
ただし、それが病的なものになると話は変わってくる。
自分はこれでいいという自己受容と、自尊感情が低くなり、その一方で、仮想的有能感と優越承認欲求ばかりが強くなると、決して本人も幸せではなかろう、と思えるからだ。
ハゲの劣等感は、スキンヘッドで克服?
僕の友人に54歳のバーコード・ハゲの男がいる。
なぜバーコードになってしまったのかと言えば、徐々に抜け出した髪を必死で守るために、両サイドに残った髪を伸ばして、頭頂部に持ってくるからだ。失いゆく髪への絶望感が、そうさせているのか。いわば、サザエさんのお父さんが、一本の毛を後生大事に守っているのと同じ心理なのだろうか、と僕はいろいろ考えた。
彼が、ハゲに劣等感がないならば問題も少ないのだが、しかし彼は、強い劣等感を持っており、その結果がバーコードなのだというから、思わず吹き出してしまった。
何かが…間違っている。
カツラメーカーであるアデランスの提供する調査は、日本人の男性で髪の毛の薄さに悩んでいる人が、約1260万人程度いると予測している。多いといえば多い。
アデランスは、1982年から「日本の成人男性薄毛率」なるものを調査しており、欧米とアジアを中心に21ヶ国で世界の成人男性薄毛率を比較した。その結果、日本は21.6%と、世界で低い方だという。
チェコ、スペイン、ドイツなどでは、ハゲは、40%を超えており、フランス、アメリカ、イタリア、ポーランド、オランダ、カナダ、イギリスなどでも、37%を超える。つまりハゲは市民権を得ている。
一方、日本では、ハゲが少ない。そのためハゲがバカにされ、劣等感を持たねばならない。
まさしくアドラーの言う「器官劣等性」なのだ。
余談だが、カツラといえば、沖縄の翁長県知事がカツラを使い始めてすぐのころの話が、少し前の『週刊文春』に掲載されていた。それによると、翁長知事が飲み屋で女性と飲んでいたところ、たまたま出くわした同級生から、『いいものかぶっているな』と言われて、激怒したのだという。彼には、ハゲ劣等感があるのだろうか?
話を戻そう。
そんなバーコード・ハゲに、今流行のAGE治療や植毛も提案したのだが、金がかかると受け入れようとしない。そこで、「いっそ、スキンヘッドにしたらいい」と提案したら、「他人ごとだから、そんなことが言える」と一蹴された。
「いやオレは、スキンヘッドにできないほど精神力は弱くないっすよ」と、彼に言った手前もあり、僕は、行きつけの美容室に行きスキンヘッドになった。
美容院も、さすがにスキンヘッドで金を取りにくいらしく半額でやってくれた。単なるスキンヘッドではつまらないのでサングラスなどもかけてみた。なかなか迫力が出て面白かった。
すると、頑なに否定していたその友人は、驚くことに僕の行動に感化されたのか、彼もまたスキンヘッドになったのである。
いままで、まわりが気を使ってハゲには誰も言及しなかったのだが、最近は、彼は、自分のことをハゲと表現するようになった。一種のカミングアウトだろう。
スキンヘッドという日本で特殊性のあるレアなヘアスタイルに身を置くと、いいことはたくさんある。まず、ハゲの劣等感は開き直りによって解消され、心の弱い人は、少し強面になることで、多少の自信がつくかもしれない。妙に気合の入った連中と「交渉」するときにも有効だ。サングラスをかけると、さらにいい。その場のイニシアチブをとることができるだろう。
だが不都合がないわけではない。スキンヘッドには、ヤクザや犯罪者も多く、その手の人間と間違われて信用を落としたりもする。警察署に遺失物を取りに行くだけで、数人の警官に取り囲まれる。道を歩くだけで、人相の悪い連中との関わりができる。そんなこともあった。
銀行に、スキンヘッドで、黒いサングラスをかけて行ってみると、ただならぬ空気が漂ってしまった。そりゃそうだろう。各地で、凄惨な事件が起こる今日。金融機関も警戒心が高いのだ。
結局のところ、見た目で判断されるということを、いみじくも体験してしまうことになる。

僕は、やがてスキンヘッドに飽きて、頭を剃るのをやめたら、毛が生えてきた。
しかし彼は、やめても生えてこない。「(真性ハゲと似非ハゲは)そこが違うんですよ」と彼は嫉妬する。
劣等感と嫉妬の関係は、さらに深いのでここで書くのは難しい。まずは、前述のアドラーが面白いので、関心がある人は読んでみて欲しい。
本文敬称略
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